と・な・り。


「だから、そもそも付き合ってないんだって。頼まれたから、言ってきたことには付き合ったけど、人並みにみんなが付き合うような関係じゃなかったんだって」


隼人はそう言うけど、香取さんを見てると全然そんな風には見えない。


まだ隼人には未練ありありだし、何よりみんなには2人はまだ付き合っていると思われてるよ。


あたしだって、そう思ってたもん。


「とにかく、これから美優は俺の彼女だな」


あたしが内心不安に思っていることなど全然気にせずに隼人は暢気にうれしそうに言いながら手を繋いできた。


「………なに?」


繋がれた手を見ながら冷たい声で聞くあたし。


「何って、付き合ってるんだから当たり前だろ?」


自信満々に言い切る隼人。


だけど、あたしはそんな隼人を見てはいけないものでも見たような目で見てしまった。


だって、明らかにキャラ違うでしょ。


長年の幼なじみで、学校でのみんなに優しいキャラは絶対違うっていうのはわかってる。


だけど、あたしの中での長年の付き合いでの隼人って、どこか冷めた感じの奴としか思ってなかった。


まさか、こんな甘々になるような奴とは………。


あたしはうれしそうにニコニコとしている隼人の手を振り払う。


「まだ、付き合ってない」


< 106 / 167 >

この作品をシェア

pagetop