と・な・り。
こいつ~~~!
あたしの言っていることの意味がわかってるの?
あたしは、香取さんも納得してでないとダメだって言ってるの。
隼人はそう思っていても香取さんは別れたとは思っていないかもしれないから、はっきりさせて欲しいのに………。
黙り込むあたしの頭上でハァ~…というため息が聞こえた。
「………わかったよ…。美優がそこまで言うのなら、香取とちゃんと話すよ。そのかわり! お前もはっきりとさせてこいよ。はっきり、断って来い。あの男に」
そんなこと言われなくてもわかってるよ。
だけど、それを口にだして言うことはできなかった。
だって、あまりにも隼人の言い方が不安そうな声だったから。
「うん。きちんと断ってくる」
「よしっ!」
隼人はあたしの頭をポンッと軽く叩くと抱きしめていた腕を離し、あたしの手に自分の手を重ねてくる。
「少しだけ………。学校の奴らと会う場所では離すから、それまではいいだろ?」
寂しそうに笑う隼人にあたしは何も言えず、ただコクリと頷いた。
そりゃ、あたしだって今すぐにみんなの前で手を繋ぎたい。
隼人はあたしの彼なんだと言いたい。
だけどね、やっぱり順序って大事だとあたしは思うんだ。
はっきりさせるまでは、あたしはやっぱり隼人の彼女にはなれないんだよ。
ごめんね。
融通の利かない女で………。
あたしは隣を歩く隼人をチラリと見ながら、複雑な心境で短い距離、手を繋いで歩いていった。