と・な・り。

「ありがとう、阿部さん。教えてくれて」


「ううん。だけど………やっぱり、何かされてたんだね」


「うん。ちょっとね」


ちょっとどころの話じゃなかったけど、これ以上話すのもはばかられてあたしは曖昧にごまかす。


そんなあたしの気持ちを察してくれたのか、阿部さんはそれ以上何を言ってくることもなかった。







　「それにしても………あの香取さんがね………。まあ、美優に南条くんへの告白を頼んでいる辺りから、『この子、性格悪い』とは思ってたけど………。こんな卑怯なことをしてくるほどの奴だったとはね………」


隠れてコソコソすることが大嫌いな麻衣はすでに香取さんは敵だとみなしているみたい。


麻衣はあたしと隼人のこと全部知っているから、香取さんがどうしてこんなことをしたのかも知っている。


だからこそ、許せないのかもしれない。


だけど、あたしはこんなことまでしてしまうほど隼人のことを好きな香取さんの気持ちがうらやましくもある。


あたしにそこまでの隼人への想いがあるかと言われると、あたしは首を傾げてしまう。


もちろん、隼人のことは好きだよ。


だけど、見境がなるなるぐらい好きかと言われると、あたしは断られた時点できっと苦しくて切なくても諦めてしまいそう。