と・な・り。


「それは違うから。嫌がらせは明らかに別物でしょ。気に入らないなら、正面きって、言いにくればいいだけの話じゃない。それさえもできないから、自分の腹いせにしているだけ。そんなの絶対に許しちゃダメなんだよ。第一、美優がむりやり南条くんのこと奪ったわけじゃないでしょ。南条くんが美優を選んで、決めたの。それを美優のせいだと思うこと自体、お門違いもいいところよ」


一気に長々としたセリフを言い切る麻衣。


聞いていながらも、そうだとはあたしも思うけど、そんなに麻衣のようにはきっぱりとは思えない。


それはやっぱりあたしの中に、なんとなくだけど、香取さんから隼人を奪ったかもしれないという気持ちがあったから。


他のことなら、あたし結構強気だったりするんだけど、恋愛ではどうしてこうも消極的なんだろう。


それって、やっぱり自分の中で自信がないからなのかな………。


あたしが香取さんよりも隼人のことを好きだという自信。


「………うん…」


「なに、そんな弱気な声出してんのよ!」


小さな声で頷くと、そんなあたしの声に麻衣はあたしが消極的だと思ったのか突っかかってくる。


そのあまりの勢いにあたしは思わず、体を仰け反る。


「いや………別に弱気というわけでは………」


「弱気でしょ! そんなに自信なさそうな声だして。そんなんじゃ、気持ちだけで香取さんに負けちゃうわよ! はっきり言って、前がどうだかは全然知らないけど、今の南条くんの彼女は美優なんだから。もっと、自信持ちなさいよ。でないと、あんなコソコソ嫌がらせしてくるような女。少しでも油断しているとすぐにでも形勢逆転されちゃうわよ」


< 122 / 167 >

この作品をシェア

pagetop