と・な・り。


「いや、麻衣。あたし、別に香取さんと戦っているわけじゃ」


「何暢気なこと言ってるのよ。あんな嫌がらせされたのよ。これは宣戦布告よ!」


ギュッと拳を作り、まくし立てる麻衣。


あまりの勢いにあたしは何も言えなかった。


やられたのは明らかにあたしなんだけど、どうしてか麻衣のほうが意気込んでるんですけど………。


麻衣は拳を天井に向けたかと思うと、いきなり振り返ってあたしのほうをキッと見る。


「売られた喧嘩は買わなくちゃ! いい? 証拠を押さえるわよ」


「はぁ?」


暢気なあたしの声に麻衣はギュッとあたしの肩を掴む。


「明日、朝の6時半に学校に集合!」


「6時半!?」


6時半って、あたしその頃って、洗濯物とかお弁当やご飯の準備でバタバタしている時間なんですけど………。


たぶん、そんなあたしの考えが顔に表れていたのだろう。


麻衣は急にあたしの頭をペシッと叩く。


「そんなこと言っている場合じゃないでしょ。7時には部活の朝練とかあるんだよ。その頃には来て、もう済ませてるかもしれないじゃない。そう思うと、やっぱり朝一から張り込まなきゃ」


「でも………明日もそんなことするとは限らないんじゃ…」


「甘いわよ、美優。ああいう奴はね、絶対に何度も繰り返すのよ。それこそ、自分の望みが叶うまではね」


麻衣の言葉に、「そうかもしれない」とは思うものの、もし張っていて、それでいて目の前で香取さんがあたしの靴箱に何かしているのを見たら、あたしはどうすればいいんだろうと思う。


「とにかく、明日は6時半! 時間厳守だからね」


あたしの思いなど、そっちのけで麻衣はやけに張り切って、明日のことを強引に決めてしまった。


ハァ~…とため息を吐きながらも、あたしはこのままでいいとは思わなかった。


気乗りはしないけど、何もしないでいるわけにはいかない。


こんな形になってしまったのなら、いずれは香取さんとはきちんと話をしなくてはいけないんだ。


それが早いか遅いかというだけのこと―――――







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