と・な・り。





 「さぶっ! もう、春は近いっていうのに、この寒さ、なんとかならないの?」


外ではなく、かろうじて校舎内にはいるにしても、この朝早い時間、人通りもなく風通しもばっちりな校舎の廊下では全く暖かさなどない。


微かに震えながら、悪態をつきながらも、麻衣は睨みつけるようにあたしの下駄箱の前を睨んでいた。


「本当に来るのかな………?」


「来るわよ! 絶対!」


弱気なあたしの発言にクワッと目を見開いて言い返す麻衣。


寒さで顔が強張りすぎていて怖いんですけど………。


そんなことを思っていると、コツコツというローファーの小さな靴音が聞こえてきた。


あたしと麻衣は目を見合わせてコクリと頷くと、そっと違う下駄箱の裏側に隠れた。


この靴音が香取さんとは限らない。


別の人物かもしれない。


だけど、どうしてだろう。


あたしと麻衣はなぜかこの靴音が香取さんであると思ったんだ。




靴音が大きくなって近づいてきたかと思うと、急に足音が止まった。


それはあたしたちの後ろの下駄箱。


そこはあたしの下駄箱があるところだった。


麻衣がそっと窺うようにして裏側の下駄箱から顔を出し、覗く。


あたしも麻衣の後を追うようにしてそっと顔を覗かした。


すると、あたしの下駄箱を開けて、何かをしている香取さんの姿がばっちりと目に入った。




カシャッ!





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