と・な・り。
あたしの目の前できられるシャッター音。
その音と同時に香取さんは驚いて靴箱に入れようとしていたものを落としてしまう。
バサバサという音と、ジャラジャラという音と共に散らばる大量の赤いペンで『死ね』と書かれた紙。
そして、今日は画鋲を入れるつもりだったみたいでその画鋲が散らばっていた。
「うわ~…。正しく、証拠画像撮っちゃった~」
白々しく携帯を香取さんが見えるように目の前でチラつかせながら、麻衣は香取さんに告げる。
証拠を取られた香取さんはこれ以上はないほどに目を大きく見開き、微かに体を震わせていた。
「やけに、陰険なことしてくれるのね。まあ、こんなことをする気持ちもわかるけど、これはやっちゃいけないことでしょ」
何も言うことができずに立ち尽くすあたしの代わりに麻衣は香取さんへと近づく。
香取さんも見られた衝撃は大きいだろうけど、その光景をこの目で見てしまったあたしの衝撃も相当のものだった。
証拠を突きつけて、もっと自分自身で問い詰めるべきなのかもしれない。
だけど、ここまで彼女を追い込んでしまったのは間違いなく、あたしだと思うと、何も言えなかった。
「なによ………。そんなもので撮って、どうするつもり? みんなに言いふらすの? それならそれで、別に構わないわよ」
「何よ、逆ギレ? 別に、言いふらすつもりも誰かに見せるつもりもないけど。だって、そんなことをすれば、結局、あんたと一緒じゃない」
くわっと目を見開いて、逆切れしてくる香取さんに麻衣は怯むことなくあっさりと言い放つ。
代わりに怯んだのは香取さんのほうだった。
「じゃあ………どういうつもりで………」
「ただ単に、こういう卑怯なやり方は止めて欲しかったから。私はこういう卑怯なやり方をされるのが1番嫌いなの。裏でコソコソ。言いたいことがあるなら、面と向って言えばいいじゃない。ねぇ? 美優」
「へ?」