と・な・り。


「なに? 言い訳するの? 本当にあの時は南条くんのこと好きじゃなかったって」


フンッと見下すように笑う香取さんの言葉にあたしは何も言えなくなる。


そうだ。


そんなこと言ったって結局は香取さんの言うとおりに言い訳でしかない。


「黙ってるってことは図星? 自分の気持ちもわからない状態だったなら、そのままでいてよ! 自分の気持ちに気づいても、何もしないで我慢しててよ!」


涙を滲ませながら、叫びながら言う香取さんにあたしは何も言えない。


ただ、誰もいない昇降口に香取さんの言葉が反射したのを遠くなる耳で聞いていただけ。


香取さんに話さなくちゃいけないって、どう話せばいいの?


香取さんの言っていることは全部その通りだ。


あたしは勝手に後ろから現れて、隼人を香取さんから奪ってしまった。


香取さんの涙ぐみながらあたしを睨んでくる目を見ていると、感じていなかった罪悪感が今さらながら込み上げてくる。





 「美優を責めるのはそれぐらいにしておけよ」


あたしと麻衣と香取さん。


この3人だけしかいないはずの昇降口。


それなのに、あたしの目の前には制服のポケットに手を突っ込みながら、けだるそうに立つ隼人の姿があった。


隼人に背を向けていた形になっていた香取さんは、勢いよく振り返る。


「な……南条くん………」


「美優が急に今日は朝早く行くからなんて言っていたから、もしかして…と思っていたら。こういうことか………」


隼人は香取さんの周りに散乱する『死ね』と書かれた紙を1枚取ると、冷たい視線を香取さんに向ける。



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