と・な・り。
「な、南条くん。あ、あの………私」
唇をわなわなと震わせながら、必死になんとか言おうとする香取さん。
香取さんは縋るように隼人の腕に手を伸ばした。
その途端、バシッと振り払う隼人。
「目の前でこんなものまで見せられて何を今さら言い訳するつもり? さっきの話も聞いてたけど、美優のことばかり責めて自分のことは悪くないとでも言うつもりか? 責める相手が間違ってるだろ。納得いかないのなら俺に言って来いよ!」
怒鳴る隼人にビクリと肩を震わせる香取さん。
学校での隼人はいつも猫を被っているから、こんな姿を見るのも初めてなのかもしれない。
びっくりした顔と怒鳴られて恐れる顔が香取さんの中で入り混じる。
「だって………私………」
「俺たちの間に付き合いなんてものはなかっただろう? 俺が告白を断ったときに、お前が『1ヶ月だけでもいいから試しに付き合ってくれ』って言った。だけど、その中でも俺はその申し出を受ける返事はしなかったはずだ。勝手に周りに『付き合っている』と言いまわって、俺に付きまとっていたのはお前だろ?」