と・な・り。
そうだったんだ。
周りは付き合ってると思っていたし、隼人も「1ヶ月だけ付き合ってくれ」と言われたと言っていたから、てっきり付き合っているものだと思ってた。
だけど、隼人はずっと付き合っててもあたしたちが思うような付き合いじゃないって言ってたから………。
なんだか、あまり深く考えているとよくわからなくなってきた。
結局、付き合ってたの?
付き合ってなかったの?
「でも、南条くんは私が『付き合っている』とみんなに言っても否定もしなかったじゃない! それって、少しは私と付き合ってもいいと思ってたからでしょ?」
「どう思ったら、そんなに自分の都合のいい考えができるわけ? そんなわけないだろ? このまま俺が否定しても断ってもお前は納得したか? 俺は納得しないと思った。1度断って、その後も断った。それでも、まだ諦めてくれないお前に好きなようにさせてみようと思った。それで少しは諦めてくれるならって。期限は1ヶ月だけだったから。さすがに自分で言ってきた期限なのだから、それでもダメなら諦めるだろうって」
隼人の言葉に、香取さんの体の震えがおさまった。
それと共に、微かに笑い出す香取さん。
「それじゃ………。南条くんは1度もあたしのことを思ってくれたことはなかったって言うの?」
隼人は何も答えず、コクリとだけ頷いた。
それが香取さんにとっての最終宣告だった。
香取さんは崩れるようにその場に座り込む。
「嘘でしょ? 嘘よ………。嘘」
「嘘じゃない。俺が好きなのは美優だけだよ。今も昔もずっと。それを知っているからお前はわざわざ美優に告白を頼んだんだろ?」
ハッとした顔で隼人の顔を見た後、香取さんはもう何も言うこともせずにそのまま力なく歩いていった。
なんだか、尋常じゃない彼女の様子が気になり、あたしは後を追おうとするが、肩を掴まれる。
「麻衣?」
「私が後を追いかけるわ。美優と南条くんはこの場所の後片付けお願い。そろそろ登校時間も迫ってるし」
それだけ言うと、麻衣は香取さんの後を追いかけていった。