と・な・り。


「ハァ~…」


あたしはまたもため息をつく。


1つ吐くと幸せが1つ逃げるというけど、そんなこともう、どうでもいいよ。


この状況、ため息の1つも吐かずにいられますか!


「………なに、ため息ばかり吐いてるの? 何かあった?」


いきなりすぐ前から声がして、あたしは閉じていた目をパチッと開ける。


すると、目の前にはお母さんの、にこにこした顔のドアップ!


「うわぁ!」


あまりにも突然の登場に思わず、飛び跳ねるように後ろに下がった。


「なによ~……。その驚き方は~。まるで人を化け物みたいに、失礼しちゃう!」


いや………、あの突然の登場の仕方はもしかして化け物かと思わせるほどだったよ。


いつの間に、目の前にいたのよ。


足音1つ聞こえなかったわよ。


「お母さんが足音1つ立てずに目の前にいるからでしょ」


あたしはまだ騒がしい胸を押さえながら、元いた場所へと戻る。


「あら、そう? 普通に歩いてきたつもりだけど? それより、何かあったわけ?」


お母さんはあたしのこのため息をつきまくりの辛気臭い顔を見ながらも、うれしそうな顔で聞いてくる。


なによ、このうれしそうな顔は!


人の気も知らないで!


なんだか、お母さんの顔を見ていたら、ムカムカしてきた。


「何かあっても、お母さんには絶対に話さないから!」


べ~っと舌をだして、プイッと顔をそむけるあたし。


子供っぽいと思われるかもしれないけど、別にいいもん。



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