と・な・り。
「そうよっ! だって、この女が紀子(のりこ)から南条くんを取るから。南条くんも何条くんよ。紀子はずっと南条くんのことが好きだった。その気持ち知ってるでしょ? それなのに、どうして? 紀子、すごく嬉しそうにしてたんだよ。南条くんとやっと付き合えるって」
「ふ~ん………」
一気に言いきった彼女に返した隼人の言葉はたったのそれだけ。
途端にギャルの顔にカッと赤みがさす。
「『ふ~ん』って、それだけなの!?」
化粧も濃いから怒った時の顔も迫力がある。
それなのに、隼人は全然動じていないみたいで、涼しい顔で彼女のことを見ていた。
「それ以上に何があるの? どうせ、俺が言ったところで一方の意見しか聞く気がない君が俺の話を信じる? 信じないだろ?」
「・・・・・・・っ! そ、そんなことない!」
そんな風に言うけど、あたしもやっぱり隼人の言うとおりだと思う。
言ったところで信じないだろうことは目に見えていた。
「ストーーーップ!」
大きな声が聞こえたかと思うと、教室の入り口でニコッとしながら立つ麻衣。
どうしたんだろう?
麻衣っていつもはこんな大きな声をだすことなんてないんだけど。
「ややこしい説明は、話の張本人も含んでしたほうがスムーズに片付くんじゃない?」
それだけ言うと、麻衣は廊下にいる人物の手を掴んで教室へと引き入れる。