と・な・り。
第2章 人気小説家、桜早苗
両手いっぱいの荷物をその場に置き、あたしは肩にかけた学生鞄から家の鍵を取り出す。
チャリチャリという鈴の音を鳴らしながらガチャリと鍵が開く音が聞こえたのを確認してあたしはちょっと洒落たドアノブを思いっきりまわす。
開いたドアの隙間に片足を入れ、置いていた荷物を持ち、お尻でゆっくりドアを開いていきながら、ゆっくりと入る。
玄関から1歩上がり、荷物を置くと、あたしは思わずしゃがみ込んだ。
「あ~……。しんどかった~…。やっぱり、一気に欲張りすぎたかな~…」
あたしは1人ごちながら、自分が買ってきた品を覗く。
でも、今日はなぜかスーパーの安売り日だったんだもん。
卵1パック98円、牛乳2本で300円。
おまけに野菜の98円市なんてやってるんだもん。
ここ最近は、値上げラッシュで買うもの全てが高い時代。
安い時に買っておかないと思いっきり損しちゃう。
「さっそく、冷蔵庫に入れておかなくちゃ!」
金額の割りにいいものを買えたことにあたしは大満足でそそくさとリビングへと向った。
だけど、リビングのドアを開けた瞬間。
あたしの先ほどまでの満足感は一気に消えうせた。
「な、な…な……なによ、なんなのよ、これは~~~!」
あたしは頭に血が上りそうな怒りをとにかく一呼吸置いて、そらし、リビングを見ないようにしてキッチンへと向った。
そして、無言で買ってきたものを冷蔵庫や冷凍庫にしまっていく。
しまい終わり、冷蔵庫をパタリと閉めると、あたしは一目散にリビングを出てその向かいにある部屋のドアをノックもせずに開けた。
「お母さん!」