と・な・り。
物思いに耽っているとキッチンタイマーのけたたましい音が聞こえ、あたしは圧力鍋の頭についている空気口の口を開ける。
その途端、シュワ~と白い蒸気が噴出し、キッチン中に広がった。
蒸気が噴出し終えたのを確認した後、あたしはカレールーを入れて混ぜる。
すると、一気にカレーのいい匂いが部屋中に充満する。
カレーの食欲をそそる匂いに一気にお腹が空いてきた。
「今日の晩御飯はカレーか………」
いい匂いに目を閉じて匂いを嗅いでいたあたしは突然聞こえてきた声に目を開ける。
「へぇ~……、うまそう……」
あたしがお玉でくるくると混ぜている鍋の中を覗きながら隼人は素直に感想を述べる。
「は、隼人。あんた、どうしてここに?」
「ん?」
呆然と隼人を見ながらあたしはお玉を回す手だけは止めない。
一方、隼人はそんなあたしが混ぜているカレーの鍋に勝手にどこからスプーンを出してきたのか、すくい、ひと口味見をする。
「ちょ、ちょっと、勝手に味見しないでよ! これはウチの晩御飯なんだから。それより、どうやって家に入ってきたのよ。玄関、鍵がかかってたはずよ」
「ああ……、玄関はな…。だから、お前の部屋から入ったけど………。ベランダつたって。おっ、うまいっ! お前、カレーにいつも何入れてんの? 普通のカレーとはいつも味が違う気がするんだけど………」
「そう? 別にこれといったものは入れてないわよ………って、話をそらすな! あたしの部屋からは何度も入ってこないでって言ってるでしょ! 家宅侵入罪で訴えるわよ!」
「仕方ないだろ。玄関に鍵がかかってたんだから」
隼人はムスッとしながらも、ふた口目の味見へと取り掛かる。
その手をペチリと叩き、隼人からスプーンを奪い取る。