と・な・り。
「あんたはね。玄関に鍵がかかってるとか以前の問題で、インターフォンを鳴らして入ってくるってことをしないわけ? 普通はそうでしょ?」
「なんで、そんな他人行儀なことしなくちゃいけないんだよ。……そうだ。お前、合鍵くれ。そうすれば、わざわざ玄関に鍵がかかっててもベランダづたいで入る必要もなくなるし」
こいつは、全くあたしの言っていることを理解してない。
このまま、カレーの付いたお玉で頭を殴ってやろうかと思いながらもあたしはプルプルとお玉を握る力を強めることでその衝動を抑えた。
「もう、どうでもいいわ。それより、ウチに来たって事は何か用があったんでしょ? 何よ」
お玉を片手でまわしながら、もう一方は腰に手を回し、あたしはジロリと隼人を見る。
すると、隼人はあたしの目の前にお弁当箱の包みを出した。
「これ。返しに来たんだよ。お前、学校では絶対に返してくるなって言ったから」
あ………。
そうだった……。
ずっと前から交わしていた約束だった。
いつもは帰りとかに偶然家の近くで会ったりして、その時に返してくれてたり、おばさんが持ってきてくれたりしてたから………ちょっと、忘れてた。
「あっそ………」
あたしはさりげなく包みを受け取り、キッチンのあいたスペースに置いた。
「………サンキュ。うまかった…」
「はあ?」