と・な・り。
「………って、言うか、あたしが誰に愛想振りまいていようが隼人には関係ないじゃない! 自分こそ、人のこと言えるの? 毎日無駄に女子に愛想を振りまいているのはそっちじゃない。あたし、隼人にだけはそんなこと言われたくない!」
「なんだと~! 俺だって誰が好き好んで無駄に愛想振りまくか! これも全部………」
そこまで言ってから、隼人は急に口を噤む。
「何よ。何かわけがあるなら言いなさいよ」
「別にいい。お前には何を言っても無駄だから」
隼人はプイッと顔をあたしからそらしてキッチンから出て行き、リビングのソファにドサッと座り、テレビのスイッチを入れた。
なによ、なによ、なによ、その態度は~!
自分から突っかかっておきながら、中途半端に放置して自分だけで消化しないでよ!
このあたしの怒りはどこにぶつけろって言うのよ!
「ちょっと! 隼人!」
何か言ってやろうと思って、隼人の元へと近づいていったその時――――――。
ピンポーン♪
出鼻をくじかれるようにインターホンが鳴った。
「客」
リモコンでインターホンを指す隼人。
んなことわかってるわよ!
ム~…と隼人とインターホンを見比べた後で、あたしはドスドスと音をたてながら受話器をとった。
「はい」
『こんばんは~…十宇多(とうた)出版の金井です~』
受話器からはやんわりとした今、このギスギスした空間には不似合いな声が聞こえてきた。