と・な・り。
「う~ん……。なんとか、今日中にはできそうよ。一時はどうなるかと思ったけど」
お母さんは伸びをしながら、リビングの中を入っていく。
「それはよかったです。無事間に合いそうですね」
ニコリと微笑む金井さん。
締め切り過ぎてるはずなのに、どうして金井さんはこんなにいつも落ち着いているんだろう。
絶対慌てないんだよね………。
あたしは金井さんの後姿を凝視しながらいつもながら不思議に思っていた。
「あれ? 隼人くん、来てたの?」
金井さんと話しながらリビングに入ったお母さんは、ソファに座ってテレビを見ている隼人を発見する。
お母さんの締め切りのことが気になってて、すっかり隼人のことを忘れていた。
あたしは慌てて2人の後ろからリビングに入って、ソファまで一直線。
「ちょっと、用はもう済んだんでしょ。さっさと、帰りなさいよ」
玄関を指差し、隼人に『帰れ』とおもいっきり意思表示する。
「どうしてだよ。別にいいじゃん」
明らかに金井さんがお母さんの仕事関係の人だということがわかっているのに、隼人はあたしから視線をテレビに戻す。
普通なら、邪魔だと思って自分から帰るのが普通でしょうが!
拳を右手に作り、あたしは隼人を睨みつける。
言ってやりたい。
だけど、金井さんがいる前でそんなことはさすがに言いづらいし………。
「隼人くん…」