と・な・り。
お母さんがあたしのそんな気持ちを汲み取ってくれたのか、隼人に声をかけた。
そうだ。
さすがにお母さんから言われたら、こいつも素直に帰るだろう……。
「今日の晩御飯、カレーなのよ。もしよかったら、食べていかない? もちろん、美鈴の了解を取ってからだけど…。あの子もご飯の用意してると思うから」
そうだよね…。
お母さんに期待したあたしが馬鹿だったよね。
お母さんはこういう人だった。
期待した分、裏切られた気分も大きかったあたし。
そのショックはがっくりと項垂れることで行動としてあらわれてしまった。
「はいっ! ぜひ、食べていきます!」
うれしそうに素直な返事をお母さんに向けてする隼人。
いつもの学校での猫かぶりバージョンの生活が役に立っているほどの好青年ぶりだった。
「美鈴の了解をもらってから! 今すぐに電話して、聞きなさい」
「そうですね」
あたしの存在を無視して2人は夕食を食べるか食べないかを勝手に決めてしまっている。
はっきり言って、この夕食を作ったのはあたしなんだけど!
ジロリと視線をお母さんに向けていると、お母さんはニコリと微笑む。
あたしのこの冷たい視線に全く気づいていないのね………。
一方、隼人はめずらしくすばやく行動し、すでに電話をかけていた。
きっと、おばさんのことだ。
OKの返事が出るはず………。
聞くまでもなく、あたしはキッチンに入り、4人分の夕食の用意をしはじめた。