と・な・り。







 「いや~…、あいかわらずいつ食べても美優さんの手料理は上手いですね…」


「そんな………。たかが、カレーぐらいで、大げさですよ」


金井さんはやんわりとした笑顔をあたしに向けてくれながら、料理を褒めてくれる。


お世辞かもしれないけど、褒められて悪い気はしない。


あたしは、少し下を向きながらもじもじとしてしまう。


「あら………。金井ちゃん、ダメよ。ウチの娘はまだ高校2年生なんだから、手を出したりしたら犯罪よ」


カレーを食べながら、爆弾発言を言うお母さんにあたしは飲んでいたミネラルウォーターを吐き出しそうになり、ゴホゴホとむせる。


「冗談は止めてください。先生がご心配されるようなつもりは、僕にはありませんから。それに、こんなおじさん。美優さんが迷惑ですよ」


『ねっ?』と優しく微笑む金井さん。


あたしはお母さんの言葉で動揺しちゃったのに、涼しい顔で大人の対応。


おじさんだとは思わないけど、確かに金井さんを恋愛対象でなんて見たことない。


それって、やっぱりあたしには年上の大人の人のように思えたし、金井さんの言うとおり、恋愛対象外……つまり、おじさんとして見てたということなのかもしれない。


「それに……美優さんには隼人くんという素敵な彼氏もいますしね」


ん?


金井さん?


今、さらりととんでもないこと言いませんでした?


あたしは隣で表情1つ変えないでカレーを食べている隼人に視線を向ける。


こいつが彼氏?


誰の?


……って、あたし?



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