と・な・り。
「隼人~~~~!」
あたしは部屋に入るなり、思いっきり隼人の布団を剥ぎ取り、隼人の上に馬乗りになる。
「…んあ? なんだよ。何、怒ってんの?」
眠たそうに目を擦りながら、隼人はうつろな目であたしを見てくる。
この全く知らなさそうな顔が余計にあたしの神経を逆なでする。
「『何、怒ってるの?』じゃないわよ! あんた、ウチのお母さんに恋人のフリを頼まれた時に引き受けたでしょ!」
「ああ……。そのこと………」
ポリポリと頭を掻きながら、隼人は顔だけを起こす。
「そのことって…! どうして引き受けたのよ! あんたが断ってくれてたら、お母さんも絶対に諦めてたのに。あんたが無駄にOKなんてしちゃったから、本気にしてるじゃない! あれは、何を言っても、もう無駄よ」
隼人は目を細めてあたしを見てから、もう1度、枕に頭を戻す。
そして、大きく欠伸をしてから
「いいじゃん。別に。恋人同士って言ったって、どうせフリなんだろ?」
なんて軽く言ったのち、もう1度寝ようとする。
「ちょっ! もう時間! 起きなさいよっ! それにね、フリでもどうして引き受けるわけ? フリでもお母さん、あたしたちに何させるかわからないわよ。もしかしたら、ラブストーリーだからって、ラブシーンをさせてきたりしたら……………、ぎゃああああああ!」
思わず、あたしと隼人のラブシーンを想像してしまい、必死に頭から追い出そうとあたしは頭をかかえて左右に振った。