と・な・り。


「そんなことはどうでもいいのよ! とにかく、ウチのお母さん、あたしが何を言っても聞く気配ないんだもん。でも、隼人からなら…」


「俺、嫌だよ。断る気ないもん」


「なっ! どうしてよっ!」


隼人の着替え中というさっきの光景のことを忘れ、あたしは振り返る。


ちょうど、隼人はカッターシャツを着ていて、ネクタイを締めている状態だった。


その姿がやけに色っぽくてあたしはドキリとほんの少し、本当にほんのほんの少しだけだけど、ときめいた。


きっと、気のせいだと思うけど。


「だって、おもしろそうじゃん」


あたしがあたふたとしていることに気づきもせずに、うれしそうに笑いながら隼人はあたしのことを見てくる。


「どこが、おもしろいのよっ! あたしとあんたがあ~んなことや、こ~んなことするんだよ。想像してみなさいよ。絶対に無理だから」


両手を前に出して、賢明に手を振り、無理さを思いっきりアピールするあたし。


だけど、そんなあたしの姿を見ると、隼人は無表情であたしを見てくる。


あまりの感情のこもっていない目が少し怖かったりする。


「ムカつく………」


「はぁ?」


ボソリと呟いた言葉が聞こえたが、あたしはわざと聞こえないフリをする。


だって、今『ムカつく』って聞こえたんだもん。


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