と・な・り。
「あっ! 思い出した。南条!と……え~っと、幼なじみの佐倉さん」
「お前……、俺たちのこと忘れてたのかよ………」
隼人が呆れた顔で鳴海くんを見る。
鳴海くんは苦笑いしていた。
小学、中学と一緒だったけど、今が1番鳴海くんの近くにいる気がする。
小学、中学はそんなに人数が多い学校じゃなかったのに、あたしは1度たりとも鳴海くんと同じクラスになったことがない。
それだけでもあたしと鳴海くんって全く縁がなかったんだよね。
名前だけでも、覚えてくれてただけありがたく思わなくちゃ。
「久しぶりだね。鳴海くん」
あたしは鳴海くんに笑顔を向ける。
ちゃんと、笑顔になってるかな?
胸の痛みを隠しながらあたしは笑った。
「ああ…。中学卒業してからは、1度も会わなかったもんな」
こんなに近くで笑ってくれる鳴海くん。
もっと早くにこんな笑顔を近くで見たかった。
でも、今見せてくれている笑顔の鳴海くんは………その隣にいる彼女のもの。
あたしが視線を彼女に向けたからか、鳴海くんの横よりは少し後ろに控えめに立っていた彼女の手を引っ張り鳴海くんはあたしたちに紹介しだした。
「こいつ、俺の彼女で佐中吹雪(さなかふぶき)」
照れながら言う鳴海くん。
そんなにわざわざ紹介してくれなくてもわかるよ。
鳴海くんの顔を見ていると。小学、中学でも浮いた噂がなかった鳴海くん。
鳴海くんは誰でもいいという人じゃないんだね。
きっと、自分が好きな人を見つけたんだ。
それが彼女だった。