と・な・り。
教室前まで走りついたあたしは、こっそりと教室のドアを開ける。
ゆっくりと覗き込むと、まだ先生は来てないみたい。
途端に、フゥ~…と息が出た。
あたしはゆっくりと自分の席へと向う。
そして、椅子をひき、座ろうとしたところに隣から奴がにやりと笑いながらこっちを見てきた。
「なによ、二岡。そのしまりのない顔は………」
「別に~…。あいかわらず、女からの呼び出しが多い奴だなと思って」
あたしは、思いっきり二岡を睨みつける。
「それって、嫌味? すっごくムカつくんだけど!」
「そんなんじゃないって! ただ、もてる幼なじみを持つと大変なんだなと思っただけだよ」
「その言い方がすっごく嫌味っぽいっての!」
あたしはプイッと顔を背けて次の授業の用意をする。
めずらしく、先生が来るのが遅い。
あたしとしては助かったんだけど。
「なあなあ。お前と南条って、ホントにただの幼なじみなの?」
机に肘を突きながら、身を乗り出すようにあたしに聞いてくる二岡。
なんなの、いきなり。
「それ以外に何があるっていうのよ」
ジロリと睨むと二岡は、『お~こわっ』と大げさに仰け反る。
もう、一体なにが言いたいのよ。
みんな、同じことを昔から何回も何回も!
「フ~ン……。そうなんだ。じゃあさ、お前、俺と付き合わない?」
・・・・・・・・・・・。
「はぁ?」
ぽかんと口を開けて二岡を見ていると、ちょうどタイミングよく担当教師が教室のドアを開けた。