と・な・り。






「あ~~~! もう、最悪!」


あたしは大根の皮を剥きながら、今日の二岡のことを思い出し、誰もいないキッチンで叫んでいた。


「なにが最悪なんだ?」


「うわっ!」


誰もいないと思っていたのに、急に後ろから声がしてあたしは持っていた大根を滑って落としそうになる。


お手玉するみたいにしながら、なんとか大根を落とさずにすんだあたしは、声の主を睨みつける。


「もうっ! 驚かさないでよ。今、包丁持ってるんだから危ないでしょ!」


「お前が勝手に大騒ぎしてて、俺が来たことも気づかなかったんだろ? 俺は何度も声をかけたんだぞ」


呆れた顔であたしを見ながら、隼人はあたしが今出しているものを見る。


「今日はおでんか………」


「勝手に品定めするみたいにメニューを当てるの止めてくれる?」


どうして、正解しちゃうかな?


きちんと当てられてしまい、なんだか腹が立ってくる。


「ところで、何か用? まさか、またウチのご飯を当てにして来たんじゃないでしょうね!」


「ば~か! 違うよ。ただ単に暇だったから………」


なんとも言えない答えにあたしはずっこけそうになる。


「あのねぇ、いつも暇だからってあたしのところに来るのはやめてくれない? あんたは暇でもあたしは忙しいの! それに、あたしなんかじゃなくて、隼人なら他に相手してくれる人いるでしょ」


「・・・・・・・・・」



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