と・な・り。
「やっぱり、お前何かあっただろ? お前が俺の機嫌を取ろうとする時はだいたい何かがある時だ」
ギクッ!
いつもボ~…としてるくせにこういう時だけ勘がいい。
思わず固まってしまうあたしを見て、隼人がため息をついているのがわかった。
「………で、誰?」
いきなり聞いてくる隼人にあたしはハッと顔をあげる。
「怒らないの?」
「なんで、お前に怒らなきゃいけないんだよ。はっきり言って、お前はとばっちり受けてるほうだろ?」
「で、でも! 隼人はいっつも嫌そうな顔するじゃない!」
「そりゃ……まあ、断るのも面倒くさいからな。それに、お前を使って俺に言ってくるという姑息な手段が気に入らないだけ。直接言ってくることもできないくせに妙な企みばかり頭が回るような奴は俺は嫌いだからな」
うわ~…、冷たい言い草。
学校では愛想よくしているくせに、あんたにだけはみんな言われたくないと思うよ。
「で?」
冷たい視線で隼人を睨みつけていたあたしは、いきなり声をかけられ、ハッとする。
そうだった。
とにかく、フられるとはわかっていても言っていたことだけは言わなくちゃ。
でないと、何も言わなかったなんてことがばれたら大変だもんね。
「え~っとね……。香取さんって言う子。校内では有名でしょ? 美少女だって」
「ああ………。ずる賢い奴だな。クラス同じだぞ」
「えっ!? 同じクラスなの? それなら、あたしにわざわざ頼むことないじゃない」
腕を組んでブツブツと言うあたし。