と・な・り。







あたしはできたおでんを器に入れて、ダイニングテーブルに座っている隼人の目の前に置いた。


「………なに? これ…」


読んでいた雑誌から目を離し、不審な目であたしを見ながら、恐る恐るおでんの器を指さす隼人。


まるで、得体の知れないもののような指の指し方をされて、ちょっとムカツク。


わざわざ聞かなくても見ればわかるじゃん。


おでんだって。


「おでんに決まってるでしょ。他に何に見えるって言うの?」


「そういうこと聞いてんじゃねえよ。これはどういう意味だって聞いてんの! お前が何もないのにこんなことするなんて有り得ないだろ」


なによなによ。


その言い草は!


人がせっかくただの優しい思いやりの心をだした途端にこういうこと言うの!?


あたしはムカついて、せっかく隼人に差し出したおでんの入った器を隼人の前から奪い取る。


「そんな風にいう奴には食べさせたあげないもん! これからはお弁当も作ってやんない!」


「はぁ? どうしてそうなるんだよ」


「そうだよ。あんたのお弁当を毎日作る義務なんてあたしにはもともとなかったんだから。これからは誰かに頼んで作ってもらったら? いつももててるんだからあたしじゃなくても誰かに頼んだら誰でも喜んで引き受けてくれるでしょ!」


どうして、ここまで自分でも怒っているのかもわからないけど、とにかくムカつくことはムカツク。


何に対してこんなにムカついているのかもわかんないけど、言っていることは間違いじゃないもん。


前から思ってた。


ただの幼なじみのあたしがこんな風にずっと隼人の傍にいること。


そして、お弁当なんかも作ったりすること。


それって、本当の意味で隼人のことを好きな子はおもしろくないと思うって。


中学の時もそう思ってた。


でも、結局幼なじみのいつも一緒にいる関係を今さらのように壊すこともできなくて。


でも、あたしたちはもう高校2年生なんだ。


いいかげん、離れないといけないと思う。


あたしたちは兄弟のように育ったとは言っても、やっぱり他人であるし、異性なんだから。





< 65 / 167 >

この作品をシェア

pagetop