と・な・り。
第6章 変わる関係
あたしは本当に馬鹿だと自分でも思う。
昨日、あんな風に言われたし、自分から隼人に『お弁当を作るのはやめる』と言ったのに、目の前にはなぜか4つ並んだお弁当箱。
習慣って恐ろしい。
『ハァ~…』とため息を吐いていると、横からお弁当のおかずのあまりを摘む手が伸びる。
「あれ? どうして4つもあるの? 昨日、隼人くんのお弁当やめるって言ってなかった?」
自分でもわかっているのに、追い討ちをかけるように言ってくるお母さん。
ジロリと見るとニヤニヤとしながら言ってくるものだからたちが悪い。
わざと言っているんだ。
「こ、これは! あたしが食べるんだもん。ここ最近、お腹がすっごくすくから、お昼まで待てないときの予備食だよ!」
「そんなに大きなお弁当食べるの~? 太るわよ~?」
知ってるくせに……わかってるくせに!
ムンッとあたしはエプロンをとると、2つのお弁当をサブバッグに入れ、まだ早いけど学校に行く。
こんな状態だとずっとお母さんにからかわれたままだもん。
ちょっと早いけど、予習でもしておこう。
玄関で靴を履いていると、パジャマ姿のお父さんが眠そうに頭を掻きながらこちらに歩いてきた。
「あれ? 美優。もう、行くのか?」
「うん。ご飯は用意してあるから適当に食べといて。じゃあ、いってきます」
「ああ、いってらっしゃい」
玄関を出て、ドアを閉めるとあたしは深呼吸をしながら隣の家の2階の隼人の部屋を見る。
隼人、自分でちゃんと起きれるのかな?
そんな風には思うけど、あたしはもう隼人を起こしに行かなくていいんだよね。
昨日、きっぱり言われちゃったし………。
あたしはいつも2人で歩いていた学校への道のりを初めて1人で歩いた。