と・な・り。



 「おいっ。待てよ! 美優! お前、さっきから何をそんなに怒ってんの?」


あたしの怒ってる意味など全くわかっていない隼人のその言葉がすごく気に障った。


どうして、こいつは………!


あたしは勢いよく振り返ると隼人の鼻の頭に人さし指を押し付けて、まくしたてた。


「あんたね。毎日、おばさんにあんな態度とってんの?」


「あんな態度って………?」


隼人は言いながら首を傾げる。


………どうして、話の流れ的にわからないかな………。


あたしはプルプルと腕を震わせながら、隼人を睨みつける。


たぶん、自分でもわかってないんだ。


こいつは、ガキだから!


「1回しか言わないからよ~く聞いておきなさいよ。おばさんが、せっかく作ってくれたものも適当に食べて、偉そうな口で言うし、自分が悪いのに注意されたらふてくされる。そういう態度のことをあたしは言ってんの!」


「あ………っそ………」


あたしの勢いに押されたのか隼人は一歩後ずさる。


その言い方は絶対にわかってない。


「あのね。あたしも家の家事を任される身だから、おばさんがどれほどの思いで料理を作ってるかわかるの。一生懸命作った料理をあんな風にされたからには………」


あたしはその先の言葉の代わりにキッと隼人を睨みつけた。


「わ………わかったよ………。帰ったら母さんにはちゃんと謝るよ………」


頭を掻き、口を尖らせながら言う隼人。


ま~だ、自分の中では納得してないんだな………。


そうは思うけど、これ以上言うと逆にもっとふてくされちゃうからな。


こういった匙加減も長年の付き合いからわかること。






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