と・な・り。


「そんなこと気にしなくてもいいのに。佐倉さんは南条くんの大切な幼なじみだし、何より、こうやって南条くんといられるのも佐倉さんのおかげなんだから」


香取さんには悪気なんてないのはわかってる。


だけど、だからこそ、香取さんの言う言葉がグサグサとあたしに突き刺さる。


「でも………」


それでも渋っていると、香取さんはあたしの腕をグイッと掴むと隼人のことを呼ぶ。


「南条くん! 早く行こうよ」


まさか、このまま逃げれないように腕を掴んでおく気?


「香取さん………、やっぱり」


「気にしないでって言ったでしょ。それとも、私たちと一緒に行けない理由でもあるの?」


香取さんはあたしの心の奥にしまっている気持ちまで見透かしているような目であたしを見てくる。


まさか、あたしの気持ちに気づいている?


掴まれている腕に香取さんの手の力が加わり、痛いほどに感じる。


「香取………。美優も困ってるみたいだし、別に一緒に行かなくても」


「ううん! 佐倉さんも一緒に行こうって言ってくれてるよ」


そんなこと一言だって言ってないのに、勝手に言う香取さん。


そんな嘘までついて、あたしと登校しなきゃいけない理由って何?


一緒に行きたくないという気持ちはある。


だけど、香取さんが怖くてあたしは何も言えなかった。


それが、行くことを了承したと取られたとしても。







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