と・な・り。
「二岡から聞いたよ~。ホント、性格悪いよね、香取さん」
あたしの机に頬杖をつきながら悪態をつく麻衣。
そんな麻衣の言葉に答えずにあたしは黙々と次の教科の用意をしていた。
「それにしても………、そんなに不機嫌な顔をしているってことは………今頃自覚出た? 隼人くんへの想いに」
「フゥ~…、麻衣はもしかして、ずっと前からあたしの気持ちを知っていたの?」
「まあね。美優が自分の気持ちに気づく前からね。だから、前からいろいろ言ってたでしょ? 隼人くんのこと。それにしても………最悪な状況で自分の気持ちに気づくんだもん。遅すぎ」
ツンッとあたしの額を人さし指で突く麻衣。
確かに、麻衣の言うとおり、もう少し前に気づいていればと思わずにはいられない。
気づいたからって隼人があたしのことを好きだとは限らないけど、それでも、今の話すこともできない状態よりはいいはず………。
「最悪だよね…。あたしっていつも後から後悔するんだ。いつも………」
目頭が熱くなってきて、あたしは机に顔を伏せた。
隼人のことを好きで泣くなんて有り得ない。
だって、隼人だよ?
それなのに…胸がこんなに苦しい。
誰よりも近くにいて、だからこそ誰よりも大切で、誰よりも隣にいた人。