生意気悪魔
「ん?なんだね?」

私の汚いものを見るような視線に気が付いたのか、性格の悪いおじいさんが私に声をかけた。

「いえ、なにも。」

私は冷たく言い放った。

性格の悪いおじいさんが不服そうな顔をしたのも気にせずに私は視線を十伍に戻した。

試験会場の方からもこれ見よがしな悪口の言葉がすごく聞こえた。

━━みんな十伍をバカにしてるんだ…

十伍本人は周りの声も気にせずに堂々と水晶の前に立った。

十伍が水晶に触れると突風が吹き荒れた。

「まただ!」

性格の悪いおじいさんが嬉々として声をあげた。

去年もこの突風が吹き荒れたのだ。

そして去年。

十伍は風に飛ばされ、試験に落ちた。

ハラハラしながら十伍を見つめている私の横で審査官の中でも一番偉そうで優しげなおじいさんが、ぬくもりを感じる細い目で十伍を見つめた。

十伍は吹き飛ばされまいと必死にふんばっている。

「はっはっはっ!あれは今年もダメだな」

性格の悪いおじいさんが腹を抱え笑いだした。

突風がさらに強くなり、テントの中まで掻き回され始めた。

性格の悪いおじいさんを睨み付けようとしていた私も、風に足を取られて尻餅をつきそうになった。

こんなに離れているのにすごい威力!

試験会場からは少なくとも十メートルは離れている。

しかし流れ込んでくる風は台風のように強い。

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