涙、時々ピース
「でだ、ここからが本題だ。」

咳払いをして、真面目な顔でそう言う辰巳。
俺は根拠の無い、嫌な予感にもやっとした。

「コイツ、ここで雇ってくれないか。」

辰巳が弘光を指差して言った。
俺は暫く呆気にとられる。

「それは…何とも急すぎやしないだろうか。」

雇う事自体はそれ程問題では無いのだが、何せ本当に急な事だ。

「そうだっけ?」

俺の言葉に、惚けて首を傾げる辰巳。
それに俺は全身から何かを吐き出すように、深く溜め息を吐いた。

「お前って奴は…昨日は何も言って来なかったじゃねぇか。」

そういうのは少し前の日からだな、という俺の文句を辰巳の笑い声が遮る。

「見た目チャラ男のクセして、細かい事気にしてんなよ。」

辰巳の発言に、眉間に皺を寄せる。
それに何かを察したのか、今まで困り顔で黙っていた弘光が勢いよく身を乗り出して来た。
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