《完》DEVIL'S SWEET 〜天使の憂鬱〜
あたしの右手に、ひんやり
した細い指先が触れた。



たくさんの移動する人に
まぎれて、玲斗もごく近い
距離であたしを見つめてる。



(な、何………?)



そう思う間もなく、掌を
割ってさらに冷たい感触が
触れてきて――

しなやかな指は、あたしに
その冷たい物をしっかりと
握り込ませた。



『一度帰ってから、
また出てきて』



空気がかすめるように
かすかな声が耳元で囁き、
あっという間に去っていく。


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