どうしょうもねぇくれぇ、好き。





「触んじゃねぇ。」




自分でも驚く程低い声が出た。




「え?」




小林が戸惑った目を俺に向ける。




「だから、瑞季に触んなって言ってんだ。」



「ちょ、どうしたの?渉。」




瑞季が動揺しながら俺を見つめる。



その瞳が俺を映している。




「瑞季。」




無性に、瑞季に触れたくなった。




「何?」



「こっち来い。」



「何で?」



「ぃぃから来い!」




ハッとした。



強く言い過ぎた、と瑞季を見れば瑞季は泣きそうな顔をしていて。




「分かった…。」




弱々しく返事をした瑞季に胸を痛めながら人通りが少ない階段の下へと移動する。



あんな言い方してぇ訳じゃねぇのに。




心がモヤモヤと黒い雲を作っていく。



それも、とても大きく。




このままこのモヤに自分が呑み込まれて、自分が自分で無くなるんじゃないかと不安になった。






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