スパイ・ハイスクール
意識を戻せば、目の前には落ち着いた顔の奏。しかし私はついていけない。
「何それ......。信じられないって、そんなの!」
「確かに狼人間は、月の出ている間に狼へと変貌を遂げるわ。でも、月を怖がっているってだけで、山口さんをそれと特定するのはおかしくないかしら?」
「よく分かんなぁい」
「奏、分かるように説明してよ」
私、真希、純希、徳佐の4人が一斉に口を開く。
きっと皆も信じられなかったんだ。童話や、絵本の世界でしか見たことのない「狼人間」を。
いや、信じたくても信じられないんだ。
私は奏に聞かずには居られなかった。
しかし。
「なぁ、奏。教え「お前達は黙って聞いていろ。俺は今山口さんと話をしてる」
俯いたままの山口さんを見ながら、奏は彼特有の周りを制圧するような声を部屋中に響かせる。
思わず出かかった言葉を飲み込む。
「山口さん。違うなら否定してもらって結構です。
どうなんですか?」