スパイ・ハイスクール


やがて、蚊の無くような声が聞こえてきた。


「......何故、そう思われるのですか?」


この声の発信源は、ずっと俯いたままの山口さんだ。


「実は訳あって、貴方のことを調べさせてもらったのです」


と言った。
その瞬間、山口さんは驚いたようにばっと顔を上げた。


「......」


......前言撤回。驚いた顔をしていた。

口をぽかんと開け、まったく状況を理解していない山口さん。

そりゃ、いきなり「調べてました」といわれ、「そうですか」って言う方が珍しいと思うけど。



「な、ななぜですか?」

「実は、あなたの住んでいるアパートの住民の方から、何故か子犬の鳴き声が聞こえるという話を聞いたんです。普通のアパートはペット禁止のはずなのに。

しかも大家さんも調べたけど、子犬を隠しているような住民の方は居ない、というのです」

「......」

「そこで、我々も不思議に思いまして、そのアパートを調べていたのです。


そして、あなたのことを知ったのですよ。

ーーーーーー山口さん」



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