スパイ・ハイスクール




「......こ、これが僕のお話できる全てです」


そう言い終わった山口さんは申し訳なさそうだった。

彼が発する言葉は、全てか弱くて、今にも折れてしまいそうで、周りに溶けて消えてゆく。


「ちなみに、山口というそのお名前と戸籍は......?」


真希が遠慮がちに聞いた。


「え。と......。狼人間は見た目は人間です。だから普通に戸籍や名前を持つことは出来ます。

狼人間になる方法は、狼人間に噛まれるか、狼人間の子供として生まれてくるか、なので。

僕の場合は後者。勿論、母も名前を持っていました」


皆さんと同じように、出生届を出されたんですよ、と彼は続ける。


「失礼ですが、お父様は?」

「あ......ぁ。そんな関係ではなかったようです。愛人、みたいな感じで」



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