スパイ・ハイスクール
そうですか、と呟く真希。
「あぁ...。ほ、本当に私は...、人様に迷惑ばかりかけて......。少なくとも今のアパートにはもう住めません。これからどうやって暮らしていけばよいのか......」
そう言って山口さんは両手を顔に当て、深く息を吐き出した。
「あの、あなたのお母さんは?」
「去年の暮れに他界しました。ハーフ狼人間ですから、そう簡単に親戚を頼ることなど出来ず......。僕を生む前に家を飛び出してきたみたいです」
聞いた徳佐は気まずそうな顔をした。
普段は空気を読めない純希も笑ってはいない。いや、こんな状況で誰が笑えようか。
とたんに、私は申し訳なく思った。
自分達が原先生の依頼を受けなければ、こんなに山口さんを追い詰めなかったのではないか。
確かに殺人でも、利益目的でもない。しかし、これが果たして正しかったのか。
両方が和解し、共存していく道は無いのか。
依頼がほぼ解決したというのに、誰も笑ってはいなかった。