スパイ・ハイスクール
:夏、そして近づく雷雲
みーんみーん......。
けたたましくゼミの声は鳴り響く。
青々と茂る葉っぱ達はどこか私達に笑いかけているようにも見える。
空を見上げれば雲1つない晴天。
どこを見ても圧倒させ、吸い込まれそうな青、青、青。
太陽の光と熱を浴びて灼熱と化したコンクリートの上を、2つの影が通る。
「あっちいいぃぃいいぃ」
「五月蝿いよ、棗」
「あちー」
「ウザイよ、棗」
「どう言っても言いかえしてくんのムカつく」
「事実だし」
そう、私、神谷棗と、神谷徳佐である。
「あ、そうそう。子供って体温高いらしいね」
「何が言いたい?」
「棗ってば幼児体型だから、体温も幼児かな、って思って。だからそんなに暑いのかなって」
「リュックで頭殴ろうか、君」
そんなやり取りさえもかき消してしまう蝉の声。
ーーーああ。ここにも夏がやってきた。