スパイ・ハイスクール
:と、いうことでやって来ました
◆
私の目線の席には、レンズに反射した自分の姿が映っている。周りの豪華な風景になじめていなくて、われながら笑った。
見たところ、レンズーーーもとい防犯カメラは校門前に2つ。警備員らしき、がたいのいい男は右と左に1人ずつ。
ピカピカと光る黒タイルには豪勢な字で、
「星凛女子高等学校」
と彫られている。
その黒タイルをぼー、っと見ていると、こちらに走って来る人影が見えた。
「神谷様ーっ!」
「え、」
「神谷様ぁーっ!」
「え、ちょ、」
「神谷様ぁぁーっ!」
「ちょ、貴方誰か知らないけどとりあえず黙ってくださいぃいいぃぃい!!」
私は必死に人差し指を口にあて、黙って欲しいことを伝えようとした。
「奏から連絡きてないんですか?この学園で私は、転校生として転入してくるってことになってんですよ!」
「あ、ああああ!そうでした。私としたことがついうっかり......。すみません、寺西ゆず様」
ぽかん、とした様子だった目の前のその人は慌てて謝った。
寺西ゆずとは、神谷家のお隣さんの名字(勝手に使用)と真希が好きな柚子を掛け合わせて出来た私の偽名だ。
つまり、超適当。