スパイ・ハイスクール


「あの、あなたのお名前はなんというのですか?」


そう聞くと、ちょっと驚いたような顔をする目の前の人。


「私、ですか。そうですね、まだ名乗っておりませんでしたね。私は神埼と申します。神埼とおよびください」


そう言って神埼さんはペコリ、とお辞儀をした。


「私に限らず、使用人に対しては呼び捨てでかまいません。そのような決まりになっております故」

「そう、ですか」


年上相手に呼び捨ては気が引けるけど、(まぁ、奏や双子も年上なんだけどこれとそれとは話が違う)、決まりなら従ったほうが良さそう。周りと違うことをすれば、捜査に支障が出るし。


「あの、私の寝泊りする寮、というのはどこになるんですか?」

「今からご案内いたします」


こんな敬語を使われるのは慣れない。失礼な話だけど照れくさい、を通り越して気味が悪いくらいかも。


「寺西様。お持ち物をお持ちいたします」

「や、別にこんくらい軽いんで...」

「何をおっしゃるんですか!少しの間とはいえ、寺西様をおもてなしするのが私めの仕事。ご遠慮なさらないでください」

「あ、そうっすか...」


ここに来て約5分。早くも異世界のオーラを感じる。

こんなので、1週間もやっていけるのだろうか?


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