スパイ・ハイスクール
「さ。こちらが寮になります、遠方からいらっしゃったようですし、明日に向けて体を休めてください」
そうこうしている内に私たちは寮についた。まだ門しか見えないが、ここも私の予想を上回る豪華なところなんだろうな、なんて思ったり。
「あ、どうも。じゃあ、また会ったら宜しくお願いします」
「いえ、お荷物をお部屋まで運ばせていただきます」
「え、そこまでしなくていいですよ。これくらい持てますし」
住むところまで荷物を持ってもらうだけで十分だというのに。更に住む部屋にまで持ってもらうなんて申し訳なさすぎる。
「ご遠慮なさらないで下さい。これが私の仕事ですから」
「いいですって!自分で持っていきますから」
「しかし、「本当にいいですから!!」」
この待遇があまりに申し訳なくて、つい大きめに、キツめに言ってしまった。
これが彼らの仕事だ、と分かっていながらも私には慣れないのだ。
そして私は自分の荷物を取り、
「自分のことは自分でしますから、大丈夫です」
そう言って、寮の門をくぐった。
「寺西様!」と叫ぶ声がするが気にせず足を進めた。
「ありがとうございました!」
という感謝の声だけを残して。
「不思議なお方ですねぇ...。神谷......寺西様は」