スパイ・ハイスクール
「あ、あの、ちょっと食堂が暗いなぁって思って」
「あぁ、そーゆーこと。知ってるよねー?ここの学校で起こったことくらい」
「あ、まぁ」
「それからかなぁ?こんなへーんな雰囲気になっちゃったのはさあ」
「そう、なんですか」
起こったこと、というのは有紀さんのことなんだろうな。
「あの」
「はいはい?」
「なんで私に話しかけてくれたんですか?」
こんな雰囲気なのに。それに私は昨日ここに来たばかりなのに。
という部分は言わなくても伝わっただろう。
「んあ?あぁ、あんたはね、周りとは目が違うからさぁ。この子とは上手くいくかなって思ったんだぁ」
「目?」
「何の不自由もなく暮らしてきたお嬢様たちとは違う目をしてたからさあ。むしろ.....、一度「死」でもみたことがあるんじゃないかってくらい」
どきり、とした。
なんなんだ、この少女は。
「ま、じょーだんじょーだん。私の名前は桐原菜乃(キリハラナノ)。同じ一年でしょ?呼び捨てで構わないから。それに確か、アンタと私同じクラスだから」
そしてその少女、菜乃は驚いて何も言えない私の耳元でぼそり、と呟いた。
「気をつけな。アンタ、有紀に顔がそっくりだ」