スパイ・ハイスクール
「あ、あの顔......。有紀に似てるわ」
「本当!どういうことっ」
入った途端、私の顔を嘗め回すように見、一斉にざわつく教室。
なんと顔色を悪くする者まで現れた。ある程度予想はしていたが、これまでとは......
「今日からお世話になります。寺西ゆずです。」
タイミングがよく分からなかったが、私は手早く自己紹介を言い切り、ぺこりと頭を下げた
「ゆずさんはお父様のお仕事の都合で、高校を変えることになったそうです。夏休み中という中途半端な時期ではありますが皆さん仲良くしてくださいね」
そう言ってから先生は、あそこに座ってと机を指差した。
教室の中で1つだけ空いている席。きっと、有紀さんが使っていたんだろう。
机に向かう途中でわき腹にこつん、と何かが当たる。目線を下げるとそこは菜乃の席だった。
菜乃はこっちをみて『よ ろ し く』と口パクをしている。
「皆さん静かに!始めますよ」
そして未だざわざわとうるさい教室で、ただならぬ雰囲気の中補習が始まった。