スパイ・ハイスクール



「早く来ないと、母さんが作ってくれたご飯、冷めちゃうよ」


本来の目的を忘れかけていたことに気付き、慌てて放り出された部屋をドア越しに見つめて言う。

一応それだけは言っておかないと。



そして、俺は棗の部屋を後にした。




ーーーところでだけど、今日の棗の顔色が悪いことに気付けるレベルには俺の勘もするどい。


(なんも言ってこなかったけど、気付かないわけないでショ)



大方、予想はつく。
あの事件の夢でも見たんだろう。

棗が、この家に来る根本的原因になった、あの事件。



「私は普通じゃないんだ」

「どうして、普通じゃなきゃいけないのっ」

「ねえ、徳佐。教えてよ」


“普通って、なんだろう?”




ーーねえ棗。君は悪くないって。

後、何回言ったら分かってくれる?




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