スパイ・ハイスクール




私の目の前には、お母さんが作ってくれた美味しそうな朝ご飯が並んでいる。

けれど、私の真向かいにはあの徳佐が座っている訳で。


「ほらほら、何があったか知らないけど、さっさと朝ごはん食べちゃいなさいよ」


いつもなら、美味しそうにご飯を食べる私の機嫌が悪いことを見かねてか、お母さんが声をかけてきた。お母さんには悪いけど、徳佐の顔を見るだけでイライラしてくるんだよね......。うん、理不尽なのは私が一番分かってる。



この、徳佐と同じ綺麗なこげ茶色の髪が特徴的な人は、徳佐と私のお母さんの神谷 陽子(カミヤ ヨウコ)である。本当に陽気で、天真爛漫としたお母さんだ。



しかし、私と実際に血が繋がっている訳ではない。

なぜなら、私は5歳の時に、孤児院に入れられたからだ。入れられた、といより、捨てられた、と言った方が正しいかもしれない。

まぁ、つまり、私はその孤児院からこの家、つまりは神谷家に引き取られた身、という訳だ。けど、お母さんは、私を実の子である徳佐と何の区別もなく育ててくれている。


だから私は胸をはって「神谷」の名字を名乗っているし、お母さん、と呼んでいる。最初の頃は「陽子さん」って呼んでたけどね。

でも、徳佐は昔から「徳佐」って呼び捨てだったっけ。





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