スパイ・ハイスクール
奴のことばを遮って言いきる。アイツの茶色の瞳がゆらゆらと揺れている。
「分かってる」
(、私がお母さんを殺したの)
開けては、覗いてはいけない過去。俺なんかじゃ、救いようが無い程の。
「みんな分かってるんだ。棗がそんな奴じゃないってことくらい。アイツは本当に騒がしくて、いつも馬鹿丸出しだけど、誰よりも曲がったことが大嫌いで真っ直ぐな奴で」
(私は疫病神。普通じゃない子なの)
「だから何の理由もなしに母親を見殺しにした訳じゃないって......いや、棗は何も悪くないって、あいつらなら分かってくれると思う。
だから俺は何もしないよ。アイツが自分の口から言う決心がつくまでは。」
そう言うと、咲夜は納得したように「そうか」と静かに呟いた。
(死にたい)
ーーーそう、これはパンドラの箱。
棗以外は開けては、いけない。
(でも、死んでも、許されない)