スパイ・ハイスクール




「ところで、山口さんは来たか?」


ふと、山口さんの存在を思い出したように問う奏。


「まだよ。前に私と純希で来た時は、帰ってきたのが6時ごろだったから......あと30分はあるわね」


真希の携帯に光るのは『5:30』の文字。もう少し待たなくては駄目らしい。


「そうか......。じゃあその間に、今日してもらうことを説明しておこうか」

「してもらうこと?」

「ああ、そうだ。作戦みたいなもの」


作戦なんかがあるなら、奏の考えを教えてくれてもいいのに。なんて思ったけれど、聞いても教えてくれないことは分かりきっている。


なんとももどかしい。が、奏の作戦がうまくいかなかったことはないからなんとかなるだろう。



ちらりと横の徳佐を見やれば、アイツも何か物思いにふけっているようだった。

顎に手を当てるのは、アイツの何か考え事をしている時の癖だから、すぐに分かる。

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