スパイ・ハイスクール
◆
始まりの合図は、
決して大きな声ではないが興奮が隠し切れない、そんな声だった。
「来たっ!」
声を出した純希の指を指すほうを見れば待ち人、もとい山口さんの姿があった。
作戦を聞き終わってから10分程たった今、ついに行動開始という訳だ。
真希と純希の報告どおり、山口さんは自転車を降りている。
相手の身長は徳佐と同じ175センチメートル程。猫背。推定30代のサラリーマン風。
あの人に違いない。
「棗。動くよ」
「了解っ」
「真希、純希。俺達も配置につくぞ」
「了解」
「分かったよぉ」
5人は散らばった。