スパイ・ハイスクール
そして、徳佐は山口さんに1歩近づいた。
きっと話をしやすくする為だったのだろう。
しかし徳佐が動いたことで、徳佐の背後にあった「あるもの」が山口さんの瞳に写ってしまった。
そ の 瞬 間 だ っ た !
「............っ、......ぅう、ぁう、うわああぁあ」
「山口さん?」
「う、ぁぁああぁぁああああぁあぁっあ、」
それは、もう、突然だった。
山口さんは人が変わったように叫びだしたのだ。
どんどん吐息が荒く、あの目が泳いでいた人と同一人物とは考えられないほどに。
訳が分からずうろたえる私。
「山口さん、落ち着いて」
こんな時でも落ち着いていられる徳佐はすごい。てか、ここでも上から目線か。
しかし、なおも叫び続ける山口さん。その声はやがて、恐怖を訴えるあの特有の高い声から、唸るような低い声へと変貌を遂げた。